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 その伝説はリアルだった。1994年の解体まで長きに渡り、世界の廃墟マニア垂涎の魔窟・九龍城砦(ガウロンセンチャイ)と呼ばれる悪名高き一角は確かに存在した。
始まりは宋時代(960年~)まで遡ると言われ、1960年代後半から1970年代にかけて無計画に進めた建設のために九龍城砦の街路は迷路と化し、昼でも太陽の光が差し込まず、薄暗くて汚水まみれでかつ臭気が充満した世界となった。
また、香港の法律は適用されず香港の警察官も立ち入ることができなかったため、文字通りの「無法地帯」となり、売春や麻薬、博打などあらゆる裏産業がはびこり、「あらゆる犯罪の巣窟」で「一度迷い込んだら二度と出て来れない場所」などとも言われ、最盛期には、0.026km2(約200m×120〜150m)の僅かな土地に5万人もの人々がひしめき合って人口密度は約190万人/km2と世界で最も高い地区であった。これは畳1枚に対して3人分の計算である。

日本でも1980年代にはカルト的に半ば伝説化した。中には観光バスで乗り付け、内部を探索するというツアーまであったという。
影響は劇場用アニメーション『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)やプレイステーション用ゲームソフト『クーロンズゲート(九龍風水傳:Kowloon’s Gate)』(1997年)、ドリームキャスト用ゲームソフト『シェンムーII (Shenmue II)』(2001年)など数多くの作品に及び、クリエイターのインスピレーションの源となった。

そんな九龍城砦の解体間近の姿を撮影したのは、カナダの写真家であるグレッグ・ジラールだ。 ジラールは、仲間の写真家であるイアン・ランボットと共に撮影したこれらの写真を、「City of Darkness: Life in Kowloon Walled City 」という写真集にて発表した。こちらも中古書籍が1冊29,000円(2013年12月現在、Amazon調べ)の高値がつくという人気となっている。
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